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第二十四話 友愛

Author: 文月 澪
last update Last Updated: 2025-12-10 16:00:15

 それから律は無理やり攻め寄る事は無くなった。

 ただ、やたらと触れたがる。

 時に腕に抱きつき、時に肩を組む。身長差がかなりあるから邪魔くさい事この上ない。新幹線に乗り換えた今も、指定席でピッタリと寄り添って手を握ったままだ。景色が良いからと窓際の席に座らされたが、逃がさないためと言われた方が納得できる。

 優斗も襲われるよりはマシかと享受していた。

 その間にも律はずっと喋り続けている。リビングの家具についてや、使っているシャンプーにボディソープ、果てには下着の事まで。律はとことん優斗に合わせるつもりの様だ。

 それもおかしな方向に。

「優斗はどんな下着が好み? 紐パンとかどうかな。色はやっぱり白? 今度買いに行かなきゃ」

 鼻歌を歌いながら、上機嫌な律に優斗はげんなりとしていた。

――どうかなってなんだよ。買いに行くって、自分で穿くつもりか? 僕にどうしろと……。

 優斗だって、男性同士の恋愛がある事は知っている。それを非難する気も、差別する気も無い。しかし、それが自分に向けられるとしたら話は別だ。優斗は異性愛者であり、律相手にどうこうとは考えられない。まだ得体の知れない部分の方が多いが、友人と呼べる存在だとは思う。それ以上でも以下でもないのだ。

 だが律はその気らしい。相手は自分より体格も、力も上の律なのだから抵抗するのは難しいだろう。現についさっき危機に陥ったのだ。あの場には小路がいたから難を逃れたが、宿舎で二人っきりになった場合、優斗は逃げ切る自信は無かった。

 だからといって、黙ってやられるつもりも無い。いざとなったら共切にものを言わせてでも、操は守る気でいた。右肩に立て掛けたもう一つの相棒を握りしめる。

 共切は意外な事に、何のお咎めも無しに車内へ持ち込めた。竹刀袋に入れているとはいえ真剣だ。優斗は内心ヒヤヒヤしながら周囲の視線を気にしつつも、平静を装い車窓を眺める。

 あと約二時間で京都に着く。そこからはまた車に乗り換えての移動だ。ちらと横を見れば、未だに律があれこれと喋っている。その横顔は楽しそうで、仕事の事さえ無ければ何気ない日常なのに。

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